
OKI — okibi
焼くのは、お客さまです。
熾(おき)は、炎が消えたあとの炭のことです。焼肉が焼けるのは炎の上ではなく、この状態の炭の上だけです。
北千住の炭火焼肉です。この店は料理を出しません ── 出すのは焼く前のもので、火を入れるのはお客さまの手です。だからこのページには、味の話より温度の話のほうが多く書いてあります。レバ刺しはお出しできません。センマイ刺しはお出しできます。同じ牛の内臓で、片方だけが法律で名指しされています。その線がどこにあるのかを、全部書きました。
Photo: sati (@sati_) / Unsplash
よその卓でいただいた一切れで、当店の料理ではありません。ひと切れの寄りなので、この写真が写せるのは五つの層のうち第五層 ── お客さまの手にある焼き加減 ── だけです。切り口に桃色が残っているのは赤身だからで、これはお客さまが決めてよい範囲の話です。レバー・豚・ホルモンには法律と当店の下限があり、そちらは同じようには決められません。タレの小鉢も当店のものではありません。炭も、灰も、網も、温度の柱も、いまも全部CSSで描いています。
この店の品書きは、五つの層でできています。どこまでが法律で、どこからが当店の判断で、どこからがお客さまのものなのか ── 混ぜないように分けて書きました。
01
赤身
焼き加減は、お客さまのものです。当店は何も申し上げません。
02
ホルモン
牛の内臓。下限のあるものと、無いものがあります。
03
豚
中心まで火を通します。2015年から、生でお出しすることが禁じられています。
04
鶏
中心まで火を通します。これは法律の禁止ではなく、当店の判断です。
05
生
網に載せません。お出しできるものと、できないものがあります。
the grill
網の上のどこに置くか
置く・返す・上げる。この三手だけ書いてあります。
the grill
炭の上に網が一枚あるだけの店です。網の中央が強く、端が弱い ── それだけのことなのですが、ここに一つ、順番が逆に見えるところがあります。
中央が炭の真上です。左右の端がいちばん弱いところ。
強火 ── 網の中央
中火 ── 中央と端のあいだ
弱火 ── 網の端
タン元
¥1,400
tongue
一人前 60g(三枚)
- 置く場所
- 強火(網の中央)
- 目安
- 片面 40秒/裏 20秒
- 置く網のまんなか、炭のいちばん強いところに置きます。
- 返す縁が反り、表面に汗が浮いたら一度だけ返します。
- 上げる裏は数えるだけ。中心は上げません。
舌は内臓に入るので、個体識別番号が付きません。当店でいちばん高い部位の一つですが、番号が出ないのはそのためです。
炭のまんなかの真上。表面だけを一気に変えて、中心はほとんど上げません。ここに置けるのは、火を通さなくてよいものだけです。
順番が、逆に見えるところ。
中心まで火を通すものほど、弱いところに置きます。網のいちばん強いところは、いちばん火を通さないもののためにあります。強い火で中心を上げようとすると、中心が上がる前に外側が炭になるからです。レバーとホルモンと豚が端にいるのは、火力が足りないからではありません。
core temperature
中心温度
ここから先が、この店でいちばん長い説明になります。焼くのはお客さまですが、下限のある部位が五つあります ── 三つは法律、二つは当店の判断です。出どころが違うので、別々に書いてあります。
core temperature
部位を選んで、目盛りを動かしてみてください。動く範囲が、部位ごとに違います。
赤身
ホルモン
豚
鶏
中心温度を動かしてみる
下限はありません。
この部位について、当店は何も決めていません。生でお出しすることはできませんが、網の上で何度まで上げるかは、お客さまのものです。
この三つだけ、お皿にお戻ししません。
レバー・豚・鶏は、中心に赤いところが残っているあいだ、網からお下げしません。「レアで」というご指定もお受けできません。お客さまの火加減に口を出すのは、この三つのときだけです。赤身については、生焼けに見えても何も申し上げません ── そこは決めていないので。
ハラミ ── 中心温度
63°C
45
55
60
63
68
75
85
63°C ── 多くの菌が減りはじめる温度です。温度だけでは決まらず、ここに時間が掛かります。
- 45°Cまだ何も起きていません。脂も溶けていません。
- 55°Cたんぱく質が変わりはじめ、切ると赤い汁が出ます。
- 60°Cコラーゲンが縮み、その力で肉汁が外へ押し出されます。
- 63°C多くの菌が減りはじめる温度です。温度だけでは決まらず、ここに時間が掛かります。
- 68°C筋の繊維が締まり、噛みごたえが変わります。
- 75°C「中心部で一分」と決められている温度です。
- 85°Cコラーゲンがゼラチンに変わりはじめます。ホルモンが柔らかくなるのはここから。
横隔膜なので、これも内臓です。当店でいちばんよく出る部位で、いちばん番号が付きません。
what the law took
品書きから消えたもの
この店の品書きから、三つ消えています。どれも、当店が決めたことではありません。
2011年10月1日
ユッケに、基準ができました。
基準ができた
禁止ではありません。牛の生食用食肉に規格基準が定められ、表面から1cm以上を60℃で2分以上加熱してその部分を落とすこと、専用の設備と器具で加工すること、そして提供時に決められた表示をすることが条件になりました。当店はこの基準に合わせて設備を入れ、いまもお出ししています。多くの店から消えたのは、禁じられたからではなく、条件を満たすのをやめたからです。
2012年7月1日
レバ刺しが、消えました。
禁止
牛の肝臓を生食用として販売・提供することが禁じられました。これは条件付きではありません。加熱用としてならお出しできますし、実際に焼いてお出ししています。当店の判断が入る余地はありません。
2015年6月12日
豚が、生では出せなくなりました。
禁止
豚の食肉と内臓を生食用として販売・提供することが禁じられました。肉だけでなく内臓も同じ条文の中にあります。当店のトントロと豚ホルモンに下限があるのは、これが理由です。
消えなかったもの
センマイ刺しは、残っています。
対象外・残っている
牛の第三胃です。生食用食肉の規格基準は「牛の食肉(内臓を除く)」が対象なので、これは対象外。生食用として禁じられている牛の内臓は、肝臓だけです。同じ牛の同じ内臓で、片方は名指しされ、片方はされていない ── だから当店は、片方を出して、片方を出しません。「生は危ないので置いていません」とは書きません。それは線を読んだことになりません。
お出しするときに、必ずお読みいただく二行
一般に食肉の生食は、食中毒のリスクがあります。
子供、高齢者その他食中毒に対する抵抗力の弱い方は、食肉の生食をお控えください。
この二行は、当店が考えた文言ではありません。生食用食肉を提供する店が表示しなければならないものとして、内容が決められています。よそのお店で同じ文を見かけるのは、そのためです。このページで、当店が書いていない文はこの二行だけです。
ユッケをご注文いただくと、卓にこの二行の札が置かれます。センマイ刺しは規格基準の対象外ですが、同じ札を置いています ── 対象外であることと、リスクが無いことは別の話なので。
ten digits
十桁の番号
当店の品書きには、十桁の番号が並んでいます。これは当店が親切で出しているものではありません。
牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法は、焼肉店・しゃぶしゃぶ店・すき焼き店・ステーキ店を「特定料理提供業者」として名指しし、特定牛肉について個体識別番号を表示することを義務づけています。この店が焼肉屋であること自体が、義務の引き金です。
番号は、家畜改良センターの検索で誰でも引けます。生年月日、雌雄の別、種別、飼養された農場が出ます。当店の説明を通す必要はありません。
そして、この義務がどこで切れるかも書いておきます。書かないと、番号はただの飾りです。
内臓には、番号が付きません。
この法律の対象は、枝肉・部分肉から得られた牛肉です。内臓はそこに含まれません。タンもハラミも舌や横隔膜なので内臓の扱いで、ホルモンはもちろん付きません。
輸入牛肉には、番号が付きません。
この制度は国産牛のためのものです。当店は国産だけを使っていますが、それは番号があるからではなく、番号が無くても書けることを書けるようにしておきたいからです。
豚にも鶏にも、この制度はありません。
牛だけの法律です。当店の豚と鶏については、産地と農場名を品書きに書いています ── こちらは義務ではありません。
いちばんよく出るものに、いちばん番号が付きません。
当店で番号が出るのは、ロース・カルビ・イチボ・ザブトンの四つと、そのイチボから引いたユッケだけです。ハラミにもタンにもホルモンにも付きません。この店でいちばん注文が多いのはハラミです。
番号が出るもの
- イチボ1489253760
- ザブトン1502836914
- ロース1471069283
- カルビ1493715028
- ユッケ1489253760
番号が出ないもの
- タン元内臓
- ハラミ内臓
- ミノ内臓
- シマチョウ内臓
- レバー内臓
- トントロ豚
- 豚ホルモン豚
- せせり鶏
- センマイ刺し内臓
ハラミとタンに番号が無いのは、仕入れが違うからではありません。舌と横隔膜は内臓なので、この法律の対象に入っていないからです。
grades
等級と、書ける言葉
「A5」と書きません。使っていないからではなく、それが味の等級ではないからです。
A
歩留等級
一頭から、どれだけの量の肉が取れるか。A・B・C の三段階で、多く取れるほど A です。買う側にとっての話で、食べる側の話ではありません。
5
肉質等級
脂肪交雑・肉の色沢・締まりときめ・脂肪の色沢と質、この四つを見て 1 から 5 まで。四つのうち三つは見た目の話で、味そのものを測った項目はありません。
書かない言葉
- 最高級
- 日本一
- とろける
- 口の中で消える
- 幻の
どれも根拠を示せない言葉です。示せない褒め言葉を書けば、景品表示法の優良誤認そのものになります。当店が書けるのは、確かめられることだけです。
書ける言葉
- 品種(黒毛和種・交雑種)
- 産地と農場名
- 月齢
- 枝肉から下ろしてからの日数
- 個体識別番号(牛肉のうち、内臓を除いたもの)
ついでに、A が歩留の話であることから続くことを一つ。ミノは一頭から数百グラムしか取れません。今日ミノが無いのは売り切れではなく、そもそもその量しか無いからです。「本日入荷なし」と書くと仕入れに失敗したように読めるので、当店は「一頭ぶんが出ました」と書いています。
the list
品書き
全品税込です。お通しも席料もありません。下限のある品には、その温度と、止めているのが誰かを書いてあります。
赤身
焼き加減は、お客さまのものです。当店は何も申し上げません。
タン元
たんもと/一人前 60g(三枚)
下限はありません舌は内臓に入るので、個体識別番号が付きません。当店でいちばん高い部位の一つですが、番号が出ないのはそのためです。¥1,400
ハラミ
はらみ/一人前 100g
下限はありません横隔膜なので、これも内臓です。当店でいちばんよく出る部位で、いちばん番号が付きません。¥1,300
イチボ
いちぼ/一人前 80g
1489253760
下限はありません尻の先。赤身と脂の境がいちばんはっきりしている部位です。この番号のイチボから、ユッケも引いています。¥1,800
ザブトン
ざぶとん/一人前 80g(二枚)
1502836914
下限はありません肩ロースの一部。脂が多いので、強いところに置くと炭が上がります。¥2,000
ロース
ろーす/一人前 100g
1471069283
下限はありません三十日寝かせています。熟成日数は書けますが、「とろける」とは書きません。¥1,600
カルビ
かるび/一人前 100g
1493715028
下限はありませんバラの一部です。「カルビ」は部位の名前ではなく、当店では中バラの三枚目と四枚目を指しています。¥1,500
ホルモン
牛の内臓。下限のあるものと、無いものがあります。
ミノ
みの/一人前 80g
68°C 当店が止めています第一胃。一頭から取れるのは数百グラムです。無い日があるのは売り切れではなく、そもそもその量しかありません。¥800
シマチョウ
しまちょう/一人前 80g
75°C 当店が止めています大腸。脂を落としきらないのがこの部位の焼き方で、そのために弱いところに長く置きます。¥900
レバー
ればー/一人前 80g
75°C 法律が止めています生でお出しすることはできません。焼いたレバーが目的の一品で、生の代わりではありません。¥800
豚
中心まで火を通します。2015年から、生でお出しすることが禁じられています。
トントロ
とんとろ/一人前 80g
75°C 法律が止めています頬から首。脂の融ける温度が牛より低いので、強いところに置くと一気に落ちます。¥700
豚ホルモン
ぶたほるもん/一人前 80g
75°C 法律が止めています味噌で下味を付けてあります。焦げやすいので、いちばん端でかまいません。¥700
鶏
中心まで火を通します。これは法律の禁止ではなく、当店の判断です。
せせり
せせり/一人前 80g
75°C 当店が止めています首のまわり。牛と豚のあいだに置いてあるのは、この一品だけ下限の出どころが違うからです。¥750
生
網に載せません。お出しできるものと、できないものがあります。
ユッケ
ゆっけ/60g
1489253760
網には載せません上のイチボと同じ一頭から引いています。番号も同じです。¥1,600
センマイ刺し
せんまいさし/60g
網には載せませんレバ刺しはお出しできませんが、これはお出しできます。同じ牛の同じ内臓で、片方だけが名指しされています。この店は、その線を読んでいます。¥700
rules
きまりと、できないこと
きまり
全品税込です。お通しも席料もありません。
品書きの数字が、そのままお会計の数字です。
網は、二回替えます。
ホルモンのあとと、生ものをお出しする前。ご希望があればいつでも替えます。焦げの上で焼くと、味の話ではなく別の話になります。
炭は毎日おこします。継ぎ足しません。
開店の二時間前から。昼にやっていないのはそのためです。
はさみとトングは、生用と焼き用で分けています。
卓に二組あるのはそのためです。持ち替えていただくのが面倒なのは分かっていますが、ここは省けません。
お子さまには、生ものをお出ししません。
法律の二行にそう書いてあります。当店の判断でもあります。
できないこと
レバ刺しは、お出しできません。
2012年7月1日から、牛の肝臓を生食用として提供することは禁じられています。当店の方針ではないので、頼まれても、常連の方でも、閉店間際でも変わりません。焼いたレバーはお出しします ── 生の代わりではなく、それが目的の一品です。センマイ刺しはお出しできます。
豚と鶏とレバーに、「レアで」はありません。
この三つには中心温度の下限があります。豚は法律、レバーも法律、鶏は当店の判断です。出どころが違うので、二の段では別々に書いてあります。赤身の焼き加減については、当店は何も申し上げません。
「A5」「最高級」とは書きません。
A は歩留等級、5 は肉質等級で、どちらも味の等級ではありません。書ける言葉と書けない言葉を、五の段に分けて置いてあります。
すべての品に個体識別番号が付くわけではありません。
内臓と輸入牛と豚と鶏には付きません。当店は輸入牛を使っていませんが、内臓には付かないので、いちばんよく出るハラミに番号がありません。付いていないものを、付いているようには書きません。
焼いたものをお持ち帰りいただくことはできません。
生のものも同じです。網から下ろしたあとの温度を、当店では追えないからです。方針ではなく温度の話です。
the three
三人
写真はありません。持ち場の一字だけ置いてあります。
遠藤 巧
Takumi Endo
炭と網
十七時に炭を渡してから、閉店まで一度も卓に出ません。「うちで唯一、味を決めていない人間です」と本人は言います。
許 英俊
Heo Youngjun
下処理と生もの
生食用の加工は全部この人です。専用の部屋と器具を使い、その日の作業は一人で終わらせます。分担すると器具が混ざるから、だそうです。
新開 みのり
Minori Shinkai
仕入れと帳面
個体識別番号を毎朝品書きに書き写しています。「番号は義務ですが、義務がどこで切れるかを書くのは義務じゃない。だから書きます」。
what people said
いただいた話
三つとも起きたことの記述で、味の評価ではありません。三つめは、ご希望に添えなかった方の話です。
ホルモンを端で焼けと言われて、火が弱いんじゃないかと思っていました。中心まで通すものは端だ、と紙に書いてあって、なるほどと。二十年焼肉を食べていて、逆だと思っていました。
センマイ刺しを頼んだら札が置かれて、子どもには出せませんと言われました。同じ札がユッケにも置いてありました。そういうものだと知りませんでした。
レバ刺しを頼んだら断られました。禁止されているのは知っていましたが、出す店はまだあるので、頼んでみたんです。理由を長々と説明されたのは、正直ちょっと面倒でした。
reservations
ご予約
夜のみ、お電話でお受けしています。三十二席しかないので、当日でも空いていればご案内します。生ものは数に限りがあるので、ご予約のときにお申しつけください。
お電話は営業時間内にお願いします。炭をおこしている十五時以降でしたら、開店前でもつながります。
- 夜
- 17:00 - 23:00(L.O. 22:15)(昼はやっていません。炭をおこすのに二時間かかります)
- 定休
- 月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休み)
- ご予算
- 夜のみ ¥4,500〜(お一人あたり・税込・お通しなし)
- お会計
- 現金・各種クレジットカード・QR決済
- 住所
- 東京都足立区千住 3-28-6 千住ハイム 1F
- 交通
- JR・東京メトロ・つくばエクスプレス 北千住駅 西口より徒歩6分
- 席
- 四人卓が六つ、二人卓が四つ/全三十二席(各卓に炭の七輪が一つ)
目盛りは全部で7段あります。そのうち何段が動くかは、 ご注文の部位で決まります ── 動かないところは、二の段に斜線で 引いてあります。